葬儀社天国社によるスタッフブログ
十人十色の家族葬:藤原暢晃が紡ぐ心温まる葬儀エピソード
2024.03.12
十人十色の家族葬
私(藤原暢晃)は、葬祭ディレクターとして勤務しています。
葬儀業界での経験を通じて、多くの家族とその大切な時を共有し、それぞれに合ったお別れの場を提供することに専念してきました。
この記事では、私が関わった記憶に残る葬儀のエピソードと、それを通じて感じた仕事の大切さについてお話しします。
予算に配慮した火葬のみの直葬:心を込めたサービスのご提供
ご予算のご事情から、火葬のみの直葬にてお見送りをされるお客様でした。当時は、部屋が空いていればサービスで安置部屋を提供できました。
ところが、まとめて4件ほどの葬儀が入り、ご遺体を安置する部屋を2度、3度と追われ、(さいごは)パーテーションで囲ったスペースに。会館内で何度も移動を余儀なくされ、調整をはかりながら都度気まずそうな表情で移動のお願いをする私(藤原)に対しお客様は「お金なくてすみません。」と気遣いの言葉をかけられました。私たちの仕事はボランティアではないので致し方ないことですが、この経験はとても印象深く、ときどき思い出します。
家族葬での感動的なエピソード:認知症の母との最後の別れ
ご主人を亡くされた奥様は、認知症を患い施設に入居されており、ご長男・ご長女様のお話では葬儀への参列は難しいかもしれない、とのことでした。お子様とご親戚による家族葬が終わり、出棺となった時、施設のスタッフが車椅子に乗せて奥様をお連れになりました。
参列者が棺に手を合わせ、いよいよ火葬場へ向かう車へ乗せようとする際に、私(藤原)は車椅子の奥様の低い目線からは棺のご主人の顔が見えていないことが気がかりでした。認知症とはいえ奥様にご主人のお顔を見てもらい見送って欲しいと思い、急いで倉庫に走り、高さの低い棺の台を持ってきて「車に乗せる前に、ご主人をこの低い台に載せて、奥様にご主人のお顔を見てもらいましょう」と提案しました。
低い台に棺が移され、車椅子の奥様からもご主人のお顔がしっかり見えるようになりました。その時です。奥様が突然「お父さんっ」と声をあげられ涙されました。ご主人の見送りを理解したご様子でした。ご長男様・ご長女様も大変驚かれ、「お母さんがちゃんと見送れて良かった」とお礼の言葉をいただきました。
いま、葬儀は家族葬が主流となっていますが、限られた参列者と身内だけなのだから、できるだけ気遣いや遠慮がなく心残りがないようお見送りしていただきたい。喪主・ご家族に寄り添い、ちょっとした気配りも諦めずに提案することでお見送りが大きく変わり、納得感のあるものになる。それが、葬儀を支える立場としてとても大事であることを学びました。
その場、その場で与えられた仕事を精一杯やってるような状態だったんですけど、この仕事の大事さというか。何か分かったのはその式でした。
以来、入社10年、これが1000件近いご葬儀に携わってきたプロとしての私(藤原)の仕事の流儀となっています。
故人を偲ぶサプライズ演出:家族葬での特別な思い出作り
150人が参列する一般葬を担当したことがありました。
参列者のうち、故人様を直接知る人は何人いるんだろうか。
故人様が好きだった食べもの。趣味、こだわり・・・。例えば、焼香台に千鳥饅頭が置いてあれば、それから故人の好物や人柄が偲ばれたりするものです。
「故人様がお好きだったものはなんですか?」 と、家族葬の打合せの折にそれとなく尋ねたり、故人様のエピソードにふれる中で、喜んでいただけそうなネタをさりげなく拾っていきます。
無敵の若鷹軍団への最後の贈り物:ホークスファンの故人のための葬儀
故人は40代の方で、ダイエー時代からの熱烈なホークスファンでした。
お通夜には寝台車に乗せて福岡ドームへお連れしました。祭壇の正面には大型スクリーンを設置しハイライト映像を映し、故人様が使っていた応援グッズやホークスストアにて入手したグッズを展示。仕上げにホークスのチームカラーである黄色の花をあしらい、故人様が愛した「我らの我らのホークス」の世界がつくられました。
ホークス尽くしのご葬儀での極め付けは、納棺の蓋をとじる直前に、合掌の代わりにジェット風船を飛ばしてお見送りしましょうというサプライズ提案。
勇ましいホークスの応援歌が流れるなか、参列者の手から次々とジェット風船が放たれたお見送り。90代の親御様がまだお若かった40代の息子さんを見送るという沈みがちな葬儀が、故人様を偲ぶサプライズにより晴れやかな旅立ちの式となりました。
霊柩車出て行く時に飛ばしたかったのですけど、近所にマンションがあったので、風船が飛んでしまうと大変で…
そのため、式場内でお蓋を閉める前の合唱を仏教で言うと本来合掌ですが、宗教的にも旅をしていく宗派だったので、これから旅される故人様の背中を押す意味で、風船を飛ばしてお見送りしました。
テニス愛溢れる葬儀:故人の情熱を形にした家族葬のサプライズ
病院からの搬送をアテンドしたお客様。故人様は学生時代からテニスに打ち込まれ社会人になっても続けられて、よく運動公園のコートに通っていたと奥様。故人様との思い出はやはりテニス抜きでは語れないという。参列者にはテニス仲間もいらっしゃるだろうし、故人様を偲んでいただくためにテニスを演出しよう。
祭壇に周りに故人様のテニス道具やウェアを展示するのはもちろん、そうだ、故人様縁のテニスコートの写真もかざろう。さらに、思いきって焼香台をテニスコートにしよう。とサプライズ案が決定しました。
人工芝をカットし問題は白いライン。芝の毛足が長いため両面テープをなじませ白いラインを表現した。焼香台に置く抹香入れは、なんとテニスボールを半裁して設置。意表をつく演出に参列者の表情も和んだ。「お坊さんに怒られるかな・・・と一抹の不安もよぎりましたが杞憂となり、こだわって作り込んで良かったです。
このサプライズは奥様をはじめご家族に大変喜ばれ、苦心作のテニスコートをこのまま欲しいと言っていただきました。
葬儀後のサポートでご連絡してみると、引き取った焼香台のテニスコートはまだ床の間に飾ってあるとのことで、故人様とご家族と喜んでもらいたい一心でせっせと準備したサプライズ、気持ちが届いて何より嬉しいです。
福岡における家族葬の挑戦:限られた時間で作るサプライズと心遣い
福岡は首都圏と違って火葬待ちはほぼないので、家族葬のサプライズを企画準備する時間は限られていますが、喪主やご家族の内なるお気持ちをくみ取りながら、故人様とご家族に喜んでいただけるサプライズを提案したいと思っています。
葬儀が終わるまで気丈に振舞っておられた喪主様も、いよいよご出棺となるとそれまで秘めていた感情がふきだします。
悔いのないお見送りをしていただくために、これからも故人とご家族によりそったご提案を続けていきます。
編集者情報:藤原暢晃(フジワラ ノブアキ)
一級葬祭ディレクターとして、葬儀業界での豊富な経験と専門知識を持ち合わせる。新卒で葬儀業界に入り、以来、1000件を超える葬儀のディレクションを手がける。家族葬から大規模な一般葬まで、幅広いニーズに応えるカスタマイズされたサービスを提供し、故人の人生を尊重する心温まる葬儀を実現している。人生の最終章を飾る重要な役割を担うことに情熱を注ぎ、遺族と故人に寄り添うサービスを心掛けている。